1月は42 Tokyoの入学試験であるpiscineというものを受けてました。
プログラミングスクールに入学するための1ヶ月の密度の高い試験です。
ここでは、42 Tokyoとpiscineに関してネタバレ的な内容に触れずに、自分が感じたことなどを書いていきます。
ちなみに合格しました。
Piscine通りました!
合否基準が気になったので、SNSでの合否情報と期間中の公開データの相関関係を可能な範囲で調べました。・ある公開データと合格の相関関係が0.7程度とかなり強い
・ただ、外れ値も多く、計算は複雑そう
・自己申告のみなので、サンプルに偏りありご参考までに。#42Tokyo pic.twitter.com/SrZHiz9nAy
— Mohi@学びとキャリア (@mohipeasuke) February 14, 2020
42 Tokyoとpiscine
42 Tokyoはいわゆるプログラミングスクールです。
もともとパリで始まったもので、それが波及していろいろな国で行われています。
1.完全無料のスクール
プログラミングスクールは、日本にもたくさんありますが、有料のものが基本で値段もどんどん高騰しています。
無料のものもたくさんありますが、基本的にはその後の人材紹介で稼ぐモデルとなっています。
その中で完全無料というのが大きな特徴の1つです。
フランスでも日本でもお金持ちによる多額の寄付によって支えられています。
2.ピアツーピア型の学習
一般的な学校では、一方通行で話を聞くセミナー的な授業がほとんどです。
それに対し、多くのプログラミングスクールでは、メンターや講師といった経験者に支えながら、教材を独学的に進めていくものが多いです。
詳しくは書けませんが、42 Tokyoではこれを究極的に追求した運用が行われています。
3.Piscineという試験
お金を払えば入学できるプログラミングスクールと違うのは、試験があることです。
事前にオンラインでの試験もありますが、特筆すべきは実地での試験で1ヶ月もの間行われます。
この1ヶ月の試験はpiscineという名前で、フランス語でプールのことです。ほっといたら溺れる試験で、実際にたくさんの人が溺れていきました。
ここでの、メインのお話はこの試験 == piscineに関してです。
42Tokyoの詳細は公式サイトでも見られますので、そちらも合わせてどうぞ。
Piscineの記録
277時間のコミット
僕の場合には、1/6から31までの26日間で277時間ほどを費やしました。
1日で平均10時間半くらいを使ったことになります。同じくらいコミットしている人もたくさんいたかと思います。
働きながらの参加は、個人的な感覚でいえば無理だと思います。
うまく両立している人も非常に一部いましたが、もともとここに来る必要のない技術レベルの人という印象でした。
浪人生のような生活
フラットな関係でひたすら課題に向き合うのは、自分の過去の経験に照らして考えると浪人中の生活と近かったような気がします。
ひたすら目の前の課題に向き合いながら「どこまで進んだ?」とか、「◯◯がわからない」はとか学生っぽいやり取りですね。
多様な参加者
参加者は属性もモチベーションもさまざまで、プログラミングで仕事をしている人から興味がある人までいました。
小さな高校くらいの人数なので、顔見知り程度にはなりますが、何歳か、仕事で何をしているのかすら知らない人が大半でした。
正直、あまりに忙しいので、よほど親しくならない限り、その人のバックグラウンドやモチベーションまで知ることはありませんでした。
自分も深く話したのは多く見積もっても10人いないくらいかと思います。
C言語という悪夢
この時代にC言語というプログラミング言語の中でも非常に厄介なものを扱い、「ギガが減る」と言っているそばで、その100万分の1以下のバイトを管理するのは正気の沙汰ではないと常に思っていました。
未経験者は絶対、他の言語からの方がいいと思います。
仲間
1人だったら絶対に数日で辞めてしまっていたと思います。
実際に何日か目には本気でもうやめようかと思いました。
いつも来ていれば、自然と仲良くなっていく仲間がいるからなんとか続けられるという感じでした。
プールに溺れるかどうかの99%は仲間次第かと思います。
泳いで個人的に感じたこと
他人に勧められるかどうか
自分も今までプログラミングスクールをいろいろと紹介することがありました。
その中でもかなり特殊で人を選ぶなと思ったのが正直なところです。
最初に結論です。
- 学生
- 一ヶ月の自由な時間を取れる人
- 低級なプログラミング言語から始めたい人
- なんとなくプログラミングを勉強したい人
- フルタイムで働いている人
- すぐに転職したい人
- すぐにサービスを作りたい人
- 切実な目標がある人
プログラムの内容を踏まえると、欧米でいうところのギャップイヤーだったり、大学生の春休みのプログラムだったりという色合いが強いように感じました。
具体的な目標があったり、時間的・経済的に余裕がない人には向いていないと思います。
そもそもC言語なので、具体的な何かを求める人からすると、遠回りになってしまうように感じます。
何も理解しないまま、Wordpressでそれっぽいものが作れたり、Railsでプログラムを書いたりがいいとは思いませんが、時間軸をどれくらいで考えるかはなかなか悩ましいところです。
2年後にエンジニアになれればいいという時間軸で動けるほど余裕がある人ってどれくらいいるんですかねというのは単純な疑問です。
個人的には、プログラミングに興味がある学生が春休みに来るというくらいが最適解かと思います。
社会人の場合には、転職するならポートフォリオを作ったほうがいいし、趣味でやるにもよほど時間的・金銭的余裕がないと厳しいような気がします。
自分としてどうだったか
僕はたまたま時間的・金銭的余裕があったことに加え、単純に新しくて面白そうで教育的な効果としても興味があったという理由で参加しました。
もちろん、プログラミングにも興味はありました。
ピアツーピアのみの学習が成立しうる条件やその限界なんかがわかると、より本質的で効果的な教育に近づけるのではないかという期待です。
自分としては毎日充実していたのは単純に良かったと思います。
ただ、もっと具体的な何かを作れる方がより楽しかったかなと思います。
仲間がいて楽しいから辛い筋トレが乗り越えられる的なものでした。
教育的な気付き
1つ目に、ピアツーピアでの学習は可能なものの、かなり分野が限られそう。
プログラミングやSTEM系など再現性が高い学問領域で、正解な明確な分野においては一定程度有効そうです。
逆に文系分野では、間違いを教える可能性が圧倒的に高くなるため、相性は非常に悪そうです。
2つ目に、コミュニティとしての場作りが重要かつ難しい。
ネットの掲示板やtwitterの治安が良くないように、健全なコミュニティを運営するためのコミュニティのマネジメント機能は必須です。
自主性を重んじるあまり、介入を極力減らそうとした結果、全体の効用が低下するというのは避けるのが大事ですね。
3つ目、教えるのは勉強になる。
これは論文などでも証明されていますが、教えるのは勉強になるというのは確かにそうでした。
これは比較的、どのレベル間であっても成立していたのではないかと思います。
本当に個人的な気付き
振り返ったときに良かったのは、以下の3つを再確認できたことです。
- みんなでわちゃわちゃするのが好きだということ
- プログラミングへの適性も能力も熱意もあまりないこと
- どんなにコードがかけても人間的な魅力がない人、基本的な気遣いができない人とは関わりたくないこと
やってよかったこと・やればよかったこと
できる限り、時間を使えるようにしたことと、体調管理は良かったと思います。
後、仲間がいないと溺れます。この3つ以外にはさほど重要な要素はないと思います。
もちろん、予習はできるにこしたことはないですが、必須ではないと思います。
やればよかったことは、定期券を買っておけば良かったくらいですかね。結局、1日も休まず毎日行ったので。
42Tokyoは根付くか
最後におせっかいですが、せっかく参加したので42Tokyoというプロジェクトに関する考察です。
1.競合環境
すでにプログラミングスクールは多数あり、より実用的な言語でより短期で手軽なプログラムがある中で、優位性を担保するのかは結構大変そうだと感じました。
RubyやPHPで3ヶ月集中、就職保証付きというプログラムとC言語から始めて1年というプログラムの勝負はハードモードかなと。
転職やギャップイヤーの許容度は諸外国に比べても低いので、そこらへんの時間軸のコントロールは鍵になってきそうに思います。
2.ターゲット層
独学で勝手にできるようになった人と、キャリア的・金銭的に余裕がない人は受けないので、どうしても参加者はふわっとしたライト層になります。
自分なんてその最たる例だと思っています。
プログラミングが好きすぎて、勝手に勉強していつの間にかCTOになりましたという人でも、絶対にエンジニアとして就職したいというガチな人でもないわけです。
そうしたライト層からの寄付だったり、その人たちの実績ってプロジェクトを続けるにはちょっと弱いのではという疑問があります。
3.金銭面での持続可能性
マネタイズは寄付が主ですが、日本は諸外国に比べても個人や会社の寄付を集めるハードルは非常に高いかと思います。
もちろん、最初は目新しさからの支援があるので問題ないかと思います。
その後は企業であれば、より直接的なエンジニア採用に結びつく媒体やサービスと競合するので説得するうえでの何かが必要だと思います。
個人の寄付も同様で、何らかのインパクトや圧倒的な実績が必要で、その部分の設計が難しそうだなというのが実感です。
逆にこうしたプロジェクトが日本で本当に寄付だけで回るようになったらそれは素晴らしいと思っています。
Teach for Americaみたいに就職ランキング上位に来るようだとかっこいいなと。
さらに知っておきたいこと
合否の基準すら明かされていないので、結果がどうなるかはまったくわかりませんが、非常に充実した1ヶ月でした。
大変だったけど、楽しかったなという感じです。
大人になってもこういう学びの場がたくさんあるともっといいし、自分も作っていきたいと感じています。
普段はひたすらキャリアの話を書いているので、こちらもぜひ合わせてどうぞ。