「よし、退職をしよう」と思ったときに次は何をすればいいのでしょうか?
退職願・退職届・辞表など、退職に関係しそうな書類はいろいろとあります。
退職書類はいつ・誰に・どのようなフォーマットで出せばいいのでしょうか。
転職のときの手続きはよくわからないですし、他人にも聞きづらいものです。
そこで、すでに3回退職を経験した僕が法的な話から実務上の話までを順番にご説明します。よくある質問などもまとめています。
目次
会社によって運用は大きく違う
ここでは一般論と自分の話について併記していきますが、退職のときの書類運用は会社によって大きく異なるということを念頭においてください。
一般的なサイトで説明されている内容はあくまで一般論です。自分のいた会社の中にはメールで済んで、1枚も書類を書かなかったケースもあります。
手書きで印刷したものを封筒に入れる会社もあれば、書いたものをPDFにしてチャットで送る会社もあります。
あまり形式的なことに時間を使うのももったいないので、面談のときに上司や人事の人に確認しておいたら、迷ったら聞くようにしましょう。
- 従業員数1,000人以上の大企業:
退職願は不要。退職届は会社指定のフォーマットあり。Wordだったため、穴埋め箇所をPCで入力。押印だけ行い、封筒に入れて提出。 - 従業員数100人以上のベンチャー:
退職願は不要。退職届け会社指定のフォーマットあり。PDFだったため、印刷したうえで、必要な部分を手書きで埋めて、提出。 - 従業員数10人程度のベンチャー:
退職願も退職届も不要。メールのやり取りと口頭のみ。
退職願・退職届・辞表の違いを知ろう
すべて同じようなものに見えるかもしれませんが、実は少しずつ違います。
退職願
退職をしたいですという希望を伝えるものです。
ニュアンスとしては、退職を決めましたというよりも退職したいのですが…という相談のイメージです。
今まで自分が退職した中では一度も使ったことがありません。
退職届に比べると、相談の要素が強く、わざわざ書類にする必要がないことも多いでしょう。
強い決意があるものの、退職届をいきなり提出するのは気が引けるという場合には使えるかもしれません。
退職届
退職をするという通告です。一般的には、退職願よりも強い意思を表すものとされています。
3回中2回はこちらを使いました。だいたい会社で用意されたフォーマットがあることが多いと思うので、それを使用します。
もしもない場合には、下に参考のテンプレートと例文をつけますので、そちらを参考にしてみてください。
基本的にはいきなり提出するようなものではなく、上司や人事などと話したうえで、引き継ぎや退職日を確定したのちに提出するものです。
会社指定のフォーマットがあるかどうか、手書きか・PCか、オンラインかオフラインかなどは面談の際に確認しておきましょう。
辞表
辞表は一般的な雇用契約ではなく、委任契約が結ばれている場合に使用するものです。
会社の場合には、経営者や取締役は経営を株主より委任されているので、辞表を使います。
公務員も同様に雇用ではなく、委任されているという理由から辞表を使います。
ほとんどの方は気にしなくてもいいでしょう。
退職の流れと退職届けを渡すタイミング
退職の流れ
一般的には退職日の1ヶ月~2ヶ月くらい前に退職手続きを始めます。
(転職先の内定をもらう)
(退職を決定する)
- 上司に相談する(退職願を渡す)
- 退職日が確定する
- 退職届(退職願)を提出する
- 最終出社日を迎える
- 退職する
大きくこのような流れになります。
民法上は退職届などで退職日の2週間前に通知することで退職は可能とされています。
ただ、円満に退職するためにも、就業規則に1ヶ月などとある場合には、できる限り守りましょう。
退職のときの印象はその後にも残りますし、とくに同じ業界であれば将来的に一緒に働く可能性もあります。
よく最低でも1ヶ月前に伝えたほうがいいといわれるのは、このような理由があります。
- 就業規則や雇用契約などで30日程度と定められているケースが多い、
- 仮に有給が10日程度あるとすると、有給消化で2週間となり、引き継ぎで2週間は欲しい
- 後任を採用するにも1~2ヶ月だと難しい
退職願・退職届の提出先とタイミング
どちらも基本的には上司に手渡しします。
席で渡したり、話したりするのはマナー違反なので、MTGの時間を取ってもらいましょう。
「少しお話したいことがありまして、お時間いただけますでしょうか」
「ご相談したいことがありまして、お話させていただけますか」
といった形でセッティングします。
退職 願 を提出する
退職願を出すとしたら最初の相談タイミングですが、よほど覚悟が決まっていない限り、退職願はなくても大丈夫です。
相談したうえで必要だといわれたら作成しましょう。
最初の相談時点で、退職日まで厳密に確定することはあまりないと思います。
その後、関係者や関係部署と連携して実際の退職日が決まります。
退職 届 を提出する
退職届は日程が決まった後に速やかに提出しましょう。会社のフォーマットがある場合にはそれを埋めます。
退職日や退職後の連絡先(住所・電話番号など)くらいかと思いますので、それほど手間がかからないでしょう。
基本的に提出先は上司ですが、人事などに直接送るように指示された場合にはそちらに送りましょう。
退職願・退職届の書き方の注意
手書きか・パソコンか?
履歴書と同じで手書きが好きな人もいますので、手書きが無難です。
自分は会社のテンプレートがワードで、日付や部署名・氏名・退職日などを埋めるだけだったときは、そのままPCで書いて提出したこともあります。
選考があるわけでもないので、そこまで気にしなくてもいいですが、上司に確認しておくのがいいでしょう。
感覚的には定形フォーマットがあるところが多いです。
用紙はどうするか?どう書くか?
紙のサイズはA4かB5のコピー用紙や白紙の便箋が基本です。
罫線入りのものでも構いませんが、ビジネス用の紙にしましょう。
手書きの場合は黒いペンか、黒い万年筆で書きましょう。
手渡し以外の方法(メール・郵送)は有効なのか?
基本的には手渡しなのですが、もめているケースや相手とどうしてもやり取りをしたくない場合には、ほかの方法を取ることもできます。
メールに関しては、ないよりはあった方がいいですが、証明が難しい可能性があるため、内容証明郵便が使われるケースが一般的です。
テンプレート・雛形・例文・サンプル
パソコンで作成する場合のWordテンプレート・フォーマット・雛形
会社指定のフォーマットがないものの、パソコンでも大丈夫という場合にはこちらを活用してください。
ワード(Word)で作成したテンプレートです。
ファイルの○△✕に日付、名前、部署名などを入れていただければ完成します。所要時間は長くても5分程度かと思います。
手書きで作成する場合の例文・サンプル
退職願・退職届は縦書きが一般的です。基本的なフォーマットは上記のような形で決まっています。
退職願と退職届では1行目の表題と本文の末尾しか変わりません。形式的なものですので、これを守りましょう。
- 1行目は、退職願、あるいは退職届という形で記載します
- 2行目は、私儀、もしくは私事と記載し、読点(、)をつけます
- 3行目から内容を記載します。自己都合の場合には、一身上の都合と記載し、会社都合の場合には、部門縮小などと具体的に記載します。
- 退職日を合意した日(退職届)、もしくは退職したい日(退職願)とします。日付は西暦でも和暦でも構いませんが、漢数字で記載しましょう。
- 退職願の場合には、「退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」などのようにお願いする形で記載し、退職届の場合には、上記のように「退職いたします」と通告のような形で書きます。
- その次に、提出した日を書きます
- 次に部や課の正式名称、自分の名前を書きます
- 名前の下に押印します。三文判でもいいですが、しゃちはたはNGです。
- 最後に宛名として会社の正式名称と会社の代表者の役職と名前を書きます
封筒の選び方・書き方
封筒に関しても白の無地のものを選びましょう。よくある茶封筒や郵便番号が書いてないものにしましょう。
サイズは紙がA4の場合には、長形3号、紙がB5の場合には長形4号が一般的ですが、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。
表には退職届(あるいは退職願)と書き、裏側に所属部署と名前を書きます。
紙・便箋の折り方と封筒への入れ方
紙の折り方や封筒への入れ方に関しても実はルールがあります。
三つ折りにして、畳んで封筒に入れます。
封はしてもしなくてもいいですが、する場合にはのりづけしたうえで、〆を記載しましょう。
よくある質問
退職願・退職届は絶対に必要か?
あったほうがいいですが、必ず必要というわけではありません。
給与支払いや有給取得など後からもめる可能性があるので、必ず作成したほうがいいでしょう。
会社都合の退職の場合には、書かないことも多いです。下の別の質問でも回答しています。
撤回はできるのか?
撤回に関しては、法的な観点とモラルの観点から考えられます。
モラル的な面でいうと、一度出してしまうとなかなか撤回は難しいでしょう。
段階にもよりますが、退職日まで決まって退職の手続きや後任の採用を始めてしまうと会社への影響も大きいです。
戻ったとしても、印象はよくないのでそれまでと同じように働くのは難しいかもしれません。
迷っている場合には、まず書類を準備せずに相談しましょう。
軽く相談したうえで残ることに決めたというのと、しかるべき書類を提出した後に撤回する場合ではあまりに重さが違います。
法的な面では、下記のような内容が検討されます。
- 退職の意思が固いかどうか(お願いか・通知か)
- 会社が受理しているかどうか
- しかるべき権限を持つ人物(人事部長・経営陣など)が受け取ったか
- 会社が承諾の意思表示をしているか
- 錯誤、詐欺、脅迫などがあったかどうか
退職願だから撤回できる、退職届だから撤回できないというものではなく、退職の意思や会社での受理、意思決定の過程に問題がなかったかなどが見られます。
撤回通知を出して証拠を残しておくなどの対処はあるのですが、退職がこじれるような場合には会社側に問題があることも多いです。
労務に強い弁護士に相談しましょう。
退職願や退職届の法的な効力は?
上の質問とも関連しますが、退職届は強い意思を持って提出されることが多いため、人事部長や経営陣が受け取った時点で、有効とされます。
基本的に提出してから2週間で法的には退職が可能となります。非常に強い効力を持つため、使い方には気をつけましょう。
また、退職願も出し方や状況によっては同じような効力を持ちます。
上司に受け取ってもらえない(受取拒否)
直属の上司が受け取ってくれないときは、そのまた上司か人事部に伝えるのが一般的です。
上司との関係性がよくなかったとしても、上司に一旦伝えたうえでほかの人に伝えるのがいいでしょう。
会社ともめてしまった・会社が受け取りを拒否するという場合には、メールや郵送などの方法を取ることもできます。
メールを使っての開封証明もありますが、内容証明付きの郵便で送るのが一般的です。
会社都合でも必要か?
基本的には会社の指示に従いますが、いくつか注意すべき点があります。
- 会社都合退職の場合には退職届は必要ない
- 悪質な会社の場合には、その退職届けをもって自己都合退職とすることがある
- それ以外でも会社が手続き上の理由で求めることがある
- 会社都合であることの証拠を残しておく
このようなリスクがあることを認識し、なにが問題が発生したときに会社都合であることを証明できるようにしておきましょう。
就業規則と民法はどちらが優先されるか?
民法が優先されます。過去の裁判でも、退職には数ヶ月前の通知が必要とされるものが無効になっていたりします。
ただ、法的な問題になると想像以上に手間も労力もかかります。
守れる範囲のものは守って、どうしても収集がつかないときのみ強硬策に出ましょう。
よほどこじれそうな場合には、弁護士や労働基準監督署に相談することも検討しましょう。
同僚や取引先にはいつ退職を伝えるか?
引き継ぎのタイミングで社内ではわかりますし、営業であれば取引先も引き継ぐため、そのタイミングで明らかになるでしょう。
それ以外の人に対しては、最終日や1日前に席に行って伝えるのがよくあります。
さらに知っておきたいこと
ここまで見てきたように、退職願・退職届・辞表にはこまかなルールがあります。
書類は形式的なものですが、なにかトラブルがあったときにも有効です。
そうそう書くものでもないかと思うので、しっかり基本を抑えて円満に退職しましょう。
また、転職先を決めていないという方はこちらの記事もどうぞ。
“【退職願・退職届・辞表の書き方まとめ】テンプレート・フォーマット・例文付” への5件のフィードバック