就活ルールがない国で新卒採用した僕が就活ルール廃止・撤廃に思うこと

就活ルールが廃止・撤廃されるということが話題になりました。

なにかと批判されることが多い新卒一括採用ですが、学生からするとメリットもあります。

就職・転職事情はかなり国によって差があり、一般化するのは難しいですが、就活ルールのない国での新卒採用が参考になるかと思います。

自分がインドネシアで新卒採用をしたときに驚いたことがいろいろあったので、ここではその経験をベースに書いていきます。

広く各国のルールを網羅して検討するものでもなければ、よく言及される欧米の実態とは離れているかもしれません。

就活ルールとは?

就活ルールは経団連が定めている、新卒学生に対する企業側の採用ルールです。

罰則があるわけでもなく、外資系企業やベンチャー企業ではこのルールに関係なく採用活動を行っています。

ただ、多くの大企業はこれを守っているので、採用が集中する時期が決まっています。

ルール上は卒業する前年の3月に説明会が解禁、6月に面接が解禁することになっています。

廃止の理由

経団連の説明によると、このような理由が挙げられています。

  • 守っていない会社も多い
  • 終身雇用が時代にそぐわなくなってきている
  • 人材獲得がしやすくなる

ルールが形骸化している上に、守るメリットがあまりないからということのようです。

就活ルールがなくて驚いた6つのこと

まず、日本との違いが大きくて、驚いた点について見ていきます。

1.就活の時期が本当にばらばら

当たり前ですが、就活の時期がばらばらです。

3月にする人もいれば、4月や8月にする人もいるということです。

インドネシアの場合には、そもそも卒業の時期がかなり柔軟で、だいたい卒業してから転職活動を始めます。

たとえば、5月に大学卒業をしたので、6月に就職活動を始めるといった感じです。

すごいカジュアルに、「今週末、卒業するんだ」といった会話がされます。

卒業してから数ヶ月間、働かない人も珍しくありません。

理由は単純に働きたくないからです。

2.新卒専用の選考がほとんどない

日本であれば、新卒専用の選考があることは珍しくありません。

エントリーシート、適性検査、グループディスカッションなどの選考手法は中途採用では使わない会社も多いでしょう。

応募に関しても就活サイトもリクナビやマイナビなど専門のものがあります。

インドネシアでも若手向けのサイトはありますが、新卒専門はほとんどありません。

中途の人と同じサイトを使って、同じ選考方法で評価されます。

一部の大手企業を除くと、書類はカバーレターとレジュメで評価されます。

日本で中途採用の人が、履歴書と職務経歴書で選考されるのと同じです。

3.新卒でも経験がシビアに見られる

もちろん、若手がポテンシャルを見られる点は変わりません。

ただ、新卒であっても実務に関してしっかり聞かれます。というか、聞きました。

インターン経験や大学時代に仕事に近い経験がないと、かなり不利になります。

とくに、インドネシアでは1~2年でやめるのはざらなので、将来よりも今何ができるかが大事です。

このことから、早慶のような有名大学を出ていないと最初の就活で結構、苦労します。

22歳の未経験者と23・24歳の経験者を比較して採用するわけです。

日本だと既卒就活に近いかもしれません。

4.総合職はあるが、少ない

日本であれば、新卒で総合職として採用されることが多いかと思います。

こうしたものがないわけではありませんが、非常に少ないです。

たとえば、大手の銀行やエネルギー関連の会社では、Management Traineeというさまざまな部署をローテーションするような総合職に似たポジションはあります。

ただ、ほかの多くの会社では具体的な職種が必ずあります。

新卒の場合には、sales/marketing/relationship managerなどの役職(全部だいたい営業)が多いです。

新卒であっても必ず職務範囲や職務における期待を明確にした、Job description(職務記述書)を募集要項で記載します。

これは日本以外の国では、かなり共通しているかと思います。

5.新卒でもがっつり給与交渉する

新卒でも給料が違うということがあります。

ここは、面接のときにも話しますし、仮に営業であればどのようなインセンティブがあるのかも必ず話します。

1件につき○円なのか、売上や利益の○%なのかということは明確にします。

職種も違うので、日本のように「総合職は全員、○○円です」という運用ではないです。

入社後も一緒で、給与交渉は新卒でも全然あります。

6.コネも大事

誰かからの紹介で仕事が決まることも多いです。

日本でいうと、コネ入社というとネガティブに取られやすいですが、日本以外だと仕事を見つける手段の1つと認識されています。

友達と一緒に同じ会社を受けに行くような人もいました。

就活ルールのメリット

学生は採用されやすい

明確に「新卒」として特別に扱われる状況がメリットであることは間違いないでしょう。

インドネシアでの就活を見ていて、中途の人と横並びで評価されるのは大変だなと思いました。

この点は就活ルールが撤廃されても大幅に変わることもないかと思いますが、より即戦力を求められることはありえるかもしれません。

活動時期が決まる

良し悪しはありますが、だらだら活動せずに一気に活動できることはメリットでしょう。

活動がギリギリになってしまったり、いつまでもずるずる活動するようなことが起きにくいメリットはありそうです。

就活ルールのデメリット

柔軟性がない

決められたスケジュールに載っていない人に対して柔軟に対応できないことがデメリットです。

海外大卒や留学で卒業時期がずれたり、就職先が決まらずに大学を卒業してしまったりする人への対応には問題があります。

卒業してもう働けるのに就活の時期を待ったり、既卒は不利になるので、就活のためだけに大学に在籍したりするのは不毛でしょう。

主体的にキャリアを考えにくい

周りに流される人は主体的にキャリアを考えるのが難しくなっています。

「決められた時期だから」、「周りが動いているから」という理由で説明会に行き、面接に行き、入社する人は十分な納得感がないまま、はたらく人もいるでしょう。

就活ルールが廃止されるとどうなるのか

1.緩やかに中途採用っぽくなっていく

就活ルールが廃止になった瞬間にがらっと変わることはないと思います。

ただ、時間経過とともに緩やかに変わっていくかと思います。

新卒独自の筆記試験やグループディスカッションなどの選考も一部を除いて減っていき、中途のような経験・スキルを確認する選考が増えるかもしれません。

2.学生は今よりも不利になる

いわゆる「新卒枠」というものが薄れるので、今よりは若干厳しくなるのかなと思います。

数十人以上、採用するような大手ではあまり変わらないかもしれませんが、それ以外では新卒採用の人が若手の中途採用の人と比べられることが多くなりそうです。

3.格差は広がる

自由度が増す分、今以上に格差は広がりそうです。

たとえば、今でも大変そうな地方の人は、経済的にも情報的にも不利になりそうです。

逆にいうと、学歴、浪人や留年などで不利になる人でもやり方次第では戦いやすくなりそうです。

4.大企業以外の選択肢が広がる

より多くの会社に触れるチャンスがあるので、大企業以外の選択肢も広がりそうです。

今でもベンチャー企業などでインターンをする人はいますが、より増えていくかと思います。

そのまま入社する人も、そこでの経験を自己PRに存分に活かす人もいるでしょう。

たまたま目にした中小企業に興味を持ったり、地方大学の人が、その地方での就職を検討したりするのも増えそうです。

5.新卒以外の20代のチャンスが広がる

今は新卒でのチャンスが非常に大きいですが、新卒以降のチャンスが増えていくのではないでしょうか。

具体的には、第二新卒や既卒と呼ばれている20代前半から、ポテンシャルが重視される20代後半までの選択肢が増えそうです。

30代以降は、人口動態的にも、解雇規制からしてもあまり影響はないと思います。

個人的に思うこと

学生の負担が今よりも増える一方で、工夫の余地が増える点はいいと思います。

ただ、新卒だけを柔軟にするのではなく、解雇規制などとセットにして中途の労働市場もより柔軟にするほうが個人の選択肢が増えていいのではないかと思っています。

日本の場合には、1社あたり最低でも3年~5年は所属し、仕事と仕事の間のブランクは極力は少なく、転職回数は増やさないことが評価されます。

これが、より短い在籍期間でもOKで、ブランクもそこまで問題にならずになれば、転職回数や在籍期間を気にしてやりたくもない仕事を続けたり、我慢したりする人が減り、労働者全体の幸福度が増すのではないかと思っています。

ちなみに、ジャカルタの20代は1~2年程度でポンポン転職しますが、これが理想だとも思わないです。

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