「ベンチャー企業と大企業はどちらがいいのか」という議論があります。
新卒で就活をするときにも、中途で転職活動をするときにも話題になります。
本質的ではないと言われることもありますが、そんな単純に分けられないことは多くの人はわかっているでしょう。
わかりやすい対立軸で比較して、その特徴を理解しようとするのは個人的には、アプローチの1つとしてありだと思っています。
ここでは、自分が両方で働いたうえで、とくに違いとして大きいと思った点を比較しました。
目次
16個の項目で比較したまとめ
まとめているうちに数がどんどん多くなりました。
大きく分けると、業務・個人・会社・待遇・キャリアの5つで、こまかい項目で16で比較しました。
分類 | 内容 | ベンチャー | 大企業 |
業務 | 仕事の規模 | 小さい | 大きい |
業務 | 業務範囲 | 広い | 深い |
業務 | 研修・サポート | ない | あり |
業務 | 社内向け業務 | 少ない | 多い |
業務 | 仕事のスピード | 速い | 遅い |
個人 | 成長速度 | 人による | |
個人 | 自由度 | 高い | 低い |
個人 | 変えられる範囲 | 広い | 小さい |
会社 | 人材レベル | 低い | 高い |
会社 | 信用・安定 | なし | あり |
待遇 | 給料 | 悪い | 良い |
待遇 | 福利厚生 | ほぼない | たくさん |
待遇 | 昇進スピード | 早い | 遅い |
待遇 | 一攫千金 | 少しあり | なし |
キャリア | 入社 | しやすい | しにくい |
キャリア | その後のキャリア | 狭い可能性 | 広い可能性 |
メリットがありそうな方を青く色付けしていますが、個数にはあまり意味はありません。
- 業務はやりやすいものが違うので、比較が難しい
- 個人としていろいろやりやすいのがベンチャーで、会社としては大企業が強い
- 待遇は大企業だが、ベンチャーも多少あり
- キャリアも比較が難しい
ここからそれぞれの項目の詳細を見ていきます。
業務の違い
1.仕事の規模
仕事の規模は圧倒的に大企業です。
ベンチャーは必死に事業を作る最中なので、大きな規模の仕事は少ないですし、重要なものは経営陣や役職者で行われます。
大企業の場合にはすでに仕組みもあるので、新卒であっても規模の大きい仕事が任されやすいです。
自分の場合には、数億から10億以上の売上がある企業を入社して数ヶ月で担当していました。
また、ナショナルクライアント(CMなどマスプロモーションを行っているような)といった、いわゆる大企業を担当することもできます。
2.業務範囲
業務範囲が広いがベンチャー、狭いのが大企業です。
これはどちらがいいともいい切れません。大企業の場合には、営業でも大手企業のアライアンスだけといった仕事をします。
ベンチャーの場合には、新規も既存も大手も中小企業も、場合によってはアライアンスやマーケティングなども担当します。
大企業の場合には専門性がつきやすいですが、狭すぎる業務は会社独自のスキルのようにもなりがちです。
一方で、ベンチャーではちゃんと専門性を作らないと、中途半端なジェネラリストになる恐れもあります。
3.研修・サポート
大企業では充実していて、ベンチャーではほとんどないです。
これは、とくに新卒やパフォーマンスの低い人に関しては差が顕著です。
ベンチャーの場合には本当にかつかつなので、残念ながらそのような人の面倒をみるにも限界があります。
ある程度まで見て厳しそうであれば、別の人を採用したり、その人への業務を減らしたりします。
大企業の場合には、どんなにイマイチな人でもそれなりに面倒を見られます。
ちょっと微妙だなと思った後輩から相談を受けたときには、大企業を進めるのはこの理由が大きいです。
4.社内向け業務
大企業ではたくさん、ベンチャーではだいぶ少ないです。
これは自分が勤めていたときに、強烈に感じていたことですが、社内向けの資料作成や言い訳の準備に時間を取られます。
また、稟議も部署をまたぐものはわざわざチャットや直接行って催促をしたり、無駄な会議への出席もあったりと内向きの業務が増えます。
こうしたものの、すべてが無駄ではないですし、そうした調整もスキルの1つですが、1日そうした業務で潰れるとなんともいえない気持ちになります。
5.仕事のスピード
ベンチャーは速く、大企業は遅くなりがちです。
ベンチャーでは速くやれないと競合に負けて潰れます。必然的に速くなります。
大企業では個人レベルで、ある程度自由にできても組織としてはやはり遅くなります。
これは業務の規模や関わる人数の多さにもよりますし、大企業病といわれるような縦割りが進んでいたり、社内プロセスが多いと更に遅くなります。
個人の違い
6.成長速度
成長速度はどちらでも速い人は速く、遅い人は遅いです。人によります。
「ベンチャー企業の方が成長が速い」と言われることもありますが、ベンチャー企業でも成長が遅い人はいくらでもいます。
大企業でも会社から提供される機会を活かしたり、周りの先輩から勉強したりする人は成長スピードが速いです。
また、上で見たように業務範囲が異なり、身につく能力の種類が違うため、なかなか比べにくいです。
7.自由度
ベンチャー企業は自由で、大企業は縛りがあることが多いです。
会社にもよりますが、営業でもイヤホンをつけながら働いたり、スタバで働いたりするのは多くの大企業では難しいです。
服装もサンダルがOKだったり、自分のタブレットを勝手に使ったり、SNSにアクセスしたりはベンチャー企業ならではです。
働き方やスタイルは、はるかにベンチャーのほうが柔軟です。
8.変えられる範囲
ベンチャー企業は自分の力で変えられる部分が多く、大企業は変えられないことがほとんどです。
自分が大企業で働いていたときの大きなストレスの1つがこれでした。
一般社員レベルだと、指示される業務が的外れでも進めなくてはいけないですし、戦略やオペレーションの改善提案もかなり難しいです。
自分だったり、チームだったりの狭い範囲ではできますが、他部署が関わった瞬間に無理になるようなものも多いです。
ベンチャーにいたときには、新しいツールの導入や事業戦略、オペレーションの改善から人事制度の提案まで自由です。
ないものを新しく作るところから関われることも多く、かなり幅広く動けます。
会社の違い
9.人材レベル
大企業の人材は平均的に優秀ですが、ベンチャーはばらつきが大きいです。
人材の質で比べると正直、ベンチャーはまったく勝負にならないと思います。
以前に比べて優秀な人が増えているということは同意するのですが、それは経営陣であったり、役職者だったり、一部の社員に限られます。
ベンチャーでは、こんな人も採用するのかというレベルの人を平気で採用します。
たとえば、大企業のときにいたような、
- 商社からMBA、コンサルといった人
- 弁護士資格を持っていて会計までわかるような人
などはほとんどいないです。
10.信用・安定
大企業にはあって、ベンチャーにはないです。
これは業務にも影響しますが、働いていることが自慢できたり、親戚からの評判だったりということにも影響します。
いまだにベンチャー企業に就職・転職すると親や嫁が反対するということもあります。
会社が安定していることが本人のキャリアが安定していることとはあまり関係ありませんが、気にする人たちはいます。
待遇
11.給料
給料は大企業の圧勝です。雲泥の差です。
自分がいた会社ではどんなに仕事ができない人でも3年目には500万円程度をほぼ全員がもらえていました。
それに対して、ベンチャーで500万円はかなりの高給取りです。部長や役員レベルということもあります。
年収800万円や年収1,000万円というのは、ベンチャーの場合には、よほど儲かっている会社以外は難しいです。
自分の周りではほとんどが250万円~400万円程度でした。
12.福利厚生
福利厚生は大企業のためだけのものです。
ベンチャーは、家賃補助も退職金も福利厚生といわれるものは何もないです。
あるのは、会社独自の変わった有給制度や、あまり費用のかからない社員旅行などです。
13.昇進スピード
昇進のスピードは一般的には、ベンチャー企業の方が速いです。
大企業では、係長や課長といったポジションに1年や2年でなることは難しいですが、ベンチャーではよくあります。
数ヶ月でチームをもったり、3年で役員になったりすることはそんなに珍しくありません。
ベンチャー企業での待遇は、より裁量のある仕事が任されることでしょう。
14.一攫千金
ベンチャー企業は一攫千金の可能性がわずかながらあります。
あまりにもベンチャー企業の待遇が寂しいので、簡単に可能性について触れます。
あなたが最初の10人~20人以内に入っている場合には、株やストックオプションをもらうことで、多額のお金をもらえる可能性があります。
確率はかなり低いですが、入社のタイミングや会社の方針、上場の規模によっては数千万円~数億円程度を手に入れられる可能性があります。
僕の友人は上場前の会社に新卒で入り、数十万円しか手に入りませんでしたが…。
キャリアの違い
15.入社しやすさ
メリットかはわかりませんが、ベンチャー企業は入りやすいです。大企業は中途では難しい会社もあります。
ベンチャー企業にいて、大企業にいた人が入社して、給料の割にパフォーマンスが低いというのは割とよく見ますが、逆はほとんど見ません。
大企業側がベンチャー企業を買収したケースではありますが、それ以外は入ってきても下の方のポジションです。
大企業の場合には、新卒で入りやすい一方で、中途では入りにくい面があるので注意が必要です。
16.その後のキャリア
人によると言いたいのですが、同じ能力だと大企業の人が有利です。
これは学歴にも近いのですが、一種のシグナリングのようなもので、大企業出身の方が優秀だろうと思われたり、優遇されたりすることが見ていると多いです。
これはコンサルティングの会社なども一緒で、待遇は高いものの、パフォーマンスは他の人を変わらない人も相当見ました。
たまに、「大企業で働き続ける方がリスクが高い」という人もいますが、年齢にあわせたスキルや経験を身につけていない人は大企業にいようが、ベンチャー企業にいようが、厳しいということです。
自分が両方見て思うのは、40歳前後くらいの平社員の人同士で比べると、大企業の方はランクを落とした会社に行く余地がありますが、ベンチャーの場合には、それが厳しいです。
実際にベンチャーを渡り歩いている30後半から40前後の人を見ると、大企業の窓際の人よりもいいなとはなかなか思えないです。
さらに知っておきたいこと
ベンチャー企業と大企業の差を見ていきました。
会社によってより大企業的だったり、ベンチャー企業的だったりしますので、目安として理解してもらえると幸いです。
とくにベンチャー企業は会社による差が半端じゃなく大きいです。自分の目で見極めるのも重要です。
これを踏まえてベンチャー企業に転職をしたい方はこちらの記事もあわせてどうぞ。