起業に少しでも興味がある人であれば、起業の成功率が非常に低いことは聞いたことがあると思います。
新しく作った会社で何年も続いたり、ましてやどこかの会社に買収されたり、上場したりする会社は本当に少ないです。
起業したときには、華々しくプレスリリースを出したり、SNSで元気のいい投稿をしますが、事業をやめるときにはみんな静かに去ります。
もともと難しいことをやろうとしているので、失敗はつきものです。
でも、せっかく自分の貴重な時間やお金を投入するのであれば、少しでも成功確率は高い方がいいですよね。
ここでは、よくある失敗の理由と成功確率を上げるためにできることをお伝えします。
目次
なぜ起業は難しいのか?
あらためて、なぜ起業は難しいのでしょうか。
新しい会社のうち9割以上は最初の10年で潰れます。
ビジネス用SNSのLinkedIn創業者のリード・ホフマンは起業の難しさをこのようにたとえています。
起業とは崖から飛び降りて、落ちるまでに飛行機を組み立てるようなものだ
普通にやったら潰れるということですね。これは自分の感覚にも非常に近いです。
会社が生まれた瞬間から死に向かいます。
あなたが200万円の会社を作り、月の支出が20万円でしたら、10か月で潰れます。
この会社が死ぬまでの期間にどうやって生き残る方法を見つけるかが重要となります。
ただ、有望な事業はすでに大企業がやっていて、簡単に誰でも思いつくような事業は別の誰かがやっています。
それに起業したり、独立したりする人でも完全に新しい事業を作った経験はそんなに多くありません。
ほっとくと潰れてしまい、市場はたくさんの競合がいて、あなたの限られた経験で進めなくてはいけないため、どうしても失敗は多くなります。
典型的な失敗と最低限の対策
では、どういう失敗が多いのかを少し見ていきましょう。
自分が見ている限りは普通に潰れるのですが、一般的に潰れた理由とされているものを見ていきます。
そして、それに対してどのような対策ができるかを書いていきます。
お金がなくなる
起業が失敗するときに一番語られるのが、資金面の問題です。
先ほどご紹介したように、会社からキャッシュがなくなるパターンです。一般的にはこの一行で済みますが、その内容はさまざまあります。
それは、単純に顧客を獲得できなかったので、収益が得られないケースもあれば、収益を得ても人を雇い過ぎたり、マーケティングにお金を使い過ぎるケースもあります。
他にも役員や従業員がお金を持って逃げてしまったり、大口の取引先が倒産したりというトラブルのようなものもあります。
対策
お金を節約すること、少しでも収入を得ておくこと。
起業家の生活費を下げることは有効です。家族がいる人は限界があるかもしれませんが、格安simに変えたり、弁当を作ったり、シェアハウスに住んだり、いろんな方法があります。
収入も重要です。コンサルティングでも運用業務でも定期的に入ってくる収入があると全然変わります。
心が折れたから
本質的にはこれが多いような気がします。
大きな設備投資をするような事業を除くと、最低限必要なお金は起業家の生活費くらいです。
起業するような人であれば、少なくとも自分の生活費くらいは稼げるでしょう。それが稼げないとなると、どちらかというと「もういいや」という精神的な問題です。
起業をすると精神的には、常にジェットコースターのような気分になります。
ある日は、自分が神様のような気分になりますし、ある日には、自分の人生なんてしょうもないと思います。
共同創業者と別れたり、資金繰りや社員の問題、必死に作ったサービスに反応がない……。いくらでも大変なことはあります。
こうした心の動きに疲れてしまうことは多いです。
対策
自分で決意する、仲間を作る、サポーターを作る、コミュニティーを作る。
自分の強い意志だけでなく、サポートしてくれる人たちをうまく作れるかが重要でしょう。
以前、起業家の精神に関してだけ書いた記事があるので、よろしければこちらもどうぞ。
【しなないために】MP(やる気)を守って生存率を上げる起業の考え方
誰も欲しがらないものを作る
これもよくある失敗の典型例です。
起業するくらいの人たちは、エネルギーレベルの高い人も多いです。こうした人たちは事業に対する思い入れが強い人も多いです。
世の中がこうあるべきだとか、自分は欲しいという思いから他の人たちが欲しがらないものを作ってしまうケースは少なくありません。
自分たちは画期的だと思ったが、誰も必要としなかった。そんなニーズはそもそもなかったということもよくあります。
技術ありきで、なにかをしたいから作ったり、こんなものを欲しがる人がいるに違いないと始める人は想像以上に多いです。
自分の強い思いと市場のニーズが一致すると大きな成果を上げられますが、空回りにならないように注意が必要です。
対策
早めの検証。さっさとモノを作ってユーザーと話しましょう。
もっとも簡単に検証できる方法を考えて、誰もいらないモノを作らないようにしましょう。
人間関係
外部が原因ではなく、内部が原因のものも多いです。
厳密には、人間関係を起点にお金の問題や精神的な問題が発生して、続けるのが難しくなることがあります。
起業の初期でもっとも身近な問題になるのが、共同創業者と別れるパターンです。自分の周りで見ていても、最初のメンバーと数年に渡って働き続けることは多くありません。
自分が知っている事例だけでも、半分以上のケースで、別れています。また、同じような問題が、共同創業者以外とも発生します。
たまに、そうした人が退職したエントリとしてブログ記事にまとめているものもあります。
対策
安易に選ばないこと。
起業初期は事業進捗を第一に考えていることもあり、少しくらいフィットしない人でも採用したい衝動に駆られます。
できる限り、一緒に働く人は、前に一緒に働いたことがある人や直接的に知っている人から採用しましょう。
もし、出会ったばかりであれば、テスト的に一緒に働いてその後のことを考えましょう。
失敗するとどうなるのか?
では、失敗するとどうなるのでしょうか。あなたが万が一、失敗したときのことも考えておきましょう。
会社と経営者は別
とくに、会社が小さいうちは会社=経営者となりがちです。
ただ、実態としては、会社(法人)と経営者(個人)は別です。
借金をする際などに企業の連帯保証人に経営者がなることは一般的ですが、最近では、連帯保証人を必要としない借金や会社に対する出資などもあり、法人の破産=個人破産ではないケースも多々あります。
個人破産するとどうなるか
会社を経営していくうえで、借金をすることは珍しいことではありません。
そして、かなりの高確率であなたはそのときに連帯保証人になります。
つまり、会社で2千万円借りてあなたが連帯保証人になるとします。その借金はあなたが借金していることとほとんど同じです。
会社がうまくいかなかったとき、あなたは返済できないでしょう。そのときの選択肢が自己破産です。一般的に破産したというときはこれを指します。
そのときにどんな不利益があるのでしょうか。
- 財産を失う(現金や預金は一定金額まで認められる)
- 5年~7年程度は借入ができない(クレジットカードも作れない)
- 官報で告知される
- 一部の職業につけない(弁護士、会計士など)
実際に、困ることしたら財産を失うことやクレジットカードが作れないなどと限定されています。
会社が倒産するような状態で、多額の現金を代表者が持っていることも考えにくいですし、つけない職業も限定的です。
官報はかなりマニアックな人しか読まないですので、少なくとも人生が終わったというような状態にはならなそうです。
大きな失敗はできない
実は人生を棒に振るような失敗はなかなかできません。
借金の連帯保証人に家族や知り合いがなっていなければ、一般的にあなたができる最悪の失敗は自己破産です。
多くの人に迷惑をかけるような失敗はなかなかさせてもらえません。
たとえば、起業したばかりの会社に何千万、何億というお金を集めるのは非常に困難です。(最近では、増えてきましたが)
大した実績もないのに、たくさんのお金や従業員を集められません。
あなたがそれだけのお金や社員や集められるということはなんらかの信頼や期待があることの裏返しです。
失敗は一番の失敗ではないかもしれない
実は失敗は立場によって違います。
会社を倒産させると、はたから見ると失敗だと思われるでしょう。あなたもしばらくは絶望感に打ちひしがれると思います。
でも実際のところ、考えられる最悪の状況はなんでしょうか。
たとえば、あなたがうまくいく可能性のない事業で10年近く働き、すべての財産をつぎ込んで、大した成果を得られなかったらどうでしょうか。
それは、2,3年で「あ、自分は向いていない」とわかったときに比べてどちらがよいでしょうか。
実はあなたに投資した投資家も相当にリターンの可能性が低くなった状態で続いてもらうよりも、早めに確定できた方がよい場合もあります。
元起業家はどうなる
成功した起業家はその後、新しい事業を始めたり、投資家として活動したり、さまざまな活動をします。
「起業失敗しました!」と公にいう人は少ないので、なかなか探すのが大変です。
自分の周りの人で見ると、普通に会社で働いているケースが多いです。
そのままフリーランスになったり、新しい事業を作るという人もいないことはないのですが、ベンチャーや大企業でも自由度が高いような会社(リクルートみたいな)で働いています。
ほかにもベンチャーキャピタルで起業家の支援側にいる人も一定数います。
失敗するケースでは、だいたい2~3年程度で長くても5~6年なので、どこかの会社に転職したのとキャリア的にはあまり変わりません。
学生起業や若手起業家の場合には、年齢的にも第二新卒とかに近いので、そうした人たちと同じようなキャリアを選んでいます。
最後に
僕個人としては、起業を絶対にした方がいいという考えはありません。
その大変さも十分わかっていますし、すべての人に向いた働き方だとは決して思えないからです。
ただ、起業をしたいという人はその思いを抱き続けて、時間が経ってしまうよりはさっさとしてしまった方がいいと思っています。
年齢を重ねると、取れるリスクが限られるのと、失敗したときに負うダメージが大きくなってしまうからです。
起業に対する見られ方も変わっていて、若いうちであれば、リスクは限りなく抑えることができます。起業に失敗しても採用したい企業はいくらでもあります。
個人的には、起業したい人は20代から遅くとも30代の前半にしておいた方がいいと思っています。これ以降になると考えなくてはいけない要素とハードルが増えます。
無責任に「やってみなよ」と言えるのは、やはり20代までかなと思います。
30代以降はある程度、収入が見えていたり、プランをある程度練っておいたり、多少の検証ができていたりすると安心です。勢いに任せず、人に相談しつつ、進めましょう。
この記事で一番伝えたかったことは、あなたの起業が失敗する可能性は高いということと、でも失敗してもあなたの人生を棒に振るのはなかなか難しいということです。