起業をしたいけど、アイデアがないといった相談をよく目にします。
今となってはなんだそんなことで悩んでいるのかと思いますが、振り返ってみると自分も最初に考えるときには、結構詰まっていたように思います。
自分も失敗だらけですが、今までいろんなものを考えてきて、だいぶそのプロセスに慣れてきました。
また、起業家のインタビューも好きでよく見ますし、周りに起業している人たちもそこそこいるので、こんなパターンが多いかなということもわかります。
アイデアはあくまでファーストステップですが、このフェーズで止まってしまう人の気持ちもよくわかります。
この記事では、起業のアイデアの考え方をご紹介したうえで、それが良いアイデアかどうか、どうやって検証するのかといったさらに進んだ内容もお伝えします。
目次
アイデアとは?
Ideaを直訳すると、考え、思いつき、着想を指しますが、ここではもう少し具体的にしておきます。
この文章で、起業のアイデアといったときは、以下の3つがセットになったものと考えてもらえればと思います。
- どの市場(誰に)
- どのような問題を解決(価値を提供)
- どのように収益を得る
たとえば、このようになります。
- 人材紹介:企業の、最適な人材採用の問題を解決し、企業から紹介手数料を得る。
- オンライン英語学習:英語を学びたい個人に、オンラインで英会話サービスを提供し、レッスン料をもらう
こういうものをどうやって考えていくのかを考えていきます。
アイデアがないことは問題なのか?
アイデアに関しては、こだわり派となんでもいい派がいます。
アイデアこだわり派からすると結構大事で、なんでもいい派からするとあまり重要ではありません。
個人的には、なんでもいい派なので、あまり重要だとは思わないのですが、そもそもどういう人たちがいるのかを理解しておくとコミュニケーションが楽になったりします。
こだわり派は市場性だったり、原体験などにこだわります。投資家の人に結構います。
この人たちは、起業⇒アイデアではなく、アイデア⇒起業という考えです。市場性はともかく、原体験はなかなか厄介です。
要は、自分が強く解決したい課題があり、それを解決するものが良いアイデアだという考え方です。
課題が明確であることに加えて、自分自身の思い入れが強いものはあきらめにくいという理由からだと思います。
もう一方は、なんでもいい派です。なんとなく一部の起業家に多いイメージです。
この人たちはどちらかといいうと「起業いいじゃん!」みたいな人たちです。堀江さんとかこっちに近いですね。
アイデアがあるならとりあえずやってみよう、やらなきゃわからないし、ダメだったら次にいけばいいという考えです。
「なんか話がかみ合わないな」と思ったときはその人がどっち派か考えてもよいかもしれません。
どうやって思いつくのか?
微妙な違いですが、アイデアは考えるよりも、思いつくものの方がいいと言われています。
考えるとそのプロセスでありもしない顧客の課題を作りあげてしまう可能性があるからですね。
この思いつき方は本当に人によって異なるのですが、いくつか例を紹介します。
すでにあるものを参考にする
これはもっともメジャーな方法の1つでしょう。
他の国で流行っているビジネスを別の国に持っていくというタイムマシン経営という言葉が流行ったこともあります。
昔はアメリカでしたが、今では中国が参考にされることが増えました。ビジネスがどんどん進み、他の国にはない新しいものが次々生まれるからですね。
なかなか思いつかないときにはおすすめです。
調べ方は簡単で、海外で資金調達をしている企業やシードアクセラレータ(起業家養成所みたいなもの)に選ばれた事業を調べるだけです。
fundraise + startup などと英語で検索してもいいですし、日本語で提供されている情報も増えてきたので、Tech CrunchやTHE BRIDGEなどが有名どころです。
こうしたものはずらっと並べて、自分が興味があるものや日本でうまくいきそうなものを見つけてさらに深堀りします。
海外に違うビジネスを持っていて失敗するケースも多いですが、ポイントはエッセンスを活かしながらいかに現地の顧客に適応するかです。
失敗しているケースは顧客を無視して、完全にそのまま持ってくるもので、この場合には本当に同じような課題があり、その課題に対して適切な解説策なのかを考える必要があります。
トレンドから考える
賛否両論ですが、トレンドから考えるアプローチもあります。
いつも技術や領域におけるトレンドはあります。ゲームであったり、メディアであったり、VR/ARだったり、その時期にホットな話題があります。
トレンドに載ると投資も受けやすかったり、取り上げてもらいやすかったり、事業の売却や上場がしやすかったりとメリットもたくさんあります。
一方で、そのトレンドに乗っかり、本質的には関係があまりなかったり、顧客の課題を無視して技術重視で考えてしまったりということもあります。
これもニュースサイトであったり、スタートアップ系のイベントを見ていれば雰囲気はわかります。
あるべき未来から考える
非常に起業家っぽい考え方ですが、こういう未来がくるからとか、こうあるべきという未来から考えるアプローチです。
うまくいけば大当たりということもありますが、現実には……なことが多いです。
強い思い込みはプラスにもマイナスにも働くので、ちゃんと検証できるかが重要です。
「そう思っているのは、あなただけではありませんか?」というのが敵になります。
身近な問題から考える
若い人の場合には難しいですが、特定の業界で経験を持った人がその業界の課題を解決するような起業は増えています。
実際に自分がその業界の課題を強く認識しているタイプで、アイデアのアプローチとしてはよいとされています。
問題があるかどうかは間違いないので、それがどれくらいの市場性があるのか、本当に解決できるのかなどを検証していくことになります。
どうやって評価するのか?
アイデアの評価は非常に難しく、検証してしまった方が早いこともありますが、基本的な考え方だけ紹介します。
誰かがもう失敗している
よくあるパターンはすでに失敗しているというものです。
成功している事業は取り上げられますが、失敗している事業は表にあまり出てきません。
完全に同じケースはありませんが、顧客の課題認識が誤っていたり、解決策が間違っていたために失敗したものがあるにも関わらず同じアプローチで行うというのは珍しくありません。
競合を甘く見ている
これもよくありますが、自分の限られた観測範囲で、既存の競合がイケていないという場合には、自分がイケていないことの方が多いです。
特に、日本の大企業は優秀なので、彼らができていない理由がわかっていないのであれば、それは実は何らかの理由でできないのかもしれません。
自分に合っているかどうか
アイデアと起業家が合っているかどうかというのも重要です。
たとえば、サービスの差別化が難しく、資金調達をガンガンしてマーケティング勝負でどんどん事業推進を進めていくものと、コツコツと売上を積み上げていくようなビジネスは全然違います。
自分のスキルや経験に合っているかどうかも重要ですが、自分の目標や自分が望む経営の仕方に合っているかどうかが重要です。
評価は難しい
アイデアはちょっと変えるだけで非常によくなることもあり、評価が難しいです。
僕もそれ思いついてたのにとなんど思ったことか。なんど聞いたかはわかりません。
みんなイケると思ってはじめて、ほとんどの人がイケていないと気づくわけです。
というわけで、もっと大事な検証についてみていきましょう。
どうやって検証するのか?
リーン・スタートアップなどが出版されたこともあり、検証という言葉が浸透しました。
アイデア段階では、まだ仮説(=思いつき)なので、さっさと検証してしまいましょうという考え方です。
インターネットの発展もあり、さまざまなツールが無料で使えるようになり、検証コストが下がったことが背景にあります。
この検証ではいかにコストを抑えて、スピーディーに行うかが重要です。いくつかの検証法をご紹介します。
リリースする
やはりベストなのはリリースすることです。
これは機能がもりもりの完全版という意味ではなく、ベータ版のような形で最低限の機能を持ったものです。(MVPと呼ばれたりもします)
サービスの概要を載せたランディングページでもいいのですが、期待感からの登録や実際のサービスを触ったときの感覚とはまた違います。
ほとんどの機能はWordpressやGoogleのアンケートフォームで簡単に対応できます。
ユーザーインタビューも含めて、長くても1ヶ月~2ヶ月程度で済ませられます。
ユーザーインタビューする
なんらかの理由でリリースが難しい場合には、ユーザーインタビューもよく使われます。
できれば、なんらかの動くモノを見せながらできるとよいですが、単純なインタビューも重要です。
アイデアで挙げた3つの要素の1つである顧客の課題が本当にあるのかを解決します。
このやり方もちょっとしたコツが必要で、誘導尋問にならないような形ですすめる必要があります。
これは1~2週間程度で終わるでしょう。
検証について詳しく知りたいという方はこちらの本もどうぞ。ちょっと高いですが、検証に関して書き尽くしていて非常に良かったです。
アイデアを思いつく段階から早いうちに検証プロセスにいけるといいですね。
もろもろの疑問点
せっかくなので、他にも起業初期に気になることに関してお答えします。
アイデアを相談すると盗まれる可能性がある
自分も恥ずかしながら初期にこう考えていた時期はありました。友人やましてや投資家などに相談すると盗まれるのではないかというものです。
結論からいうとほとんど問題はありません。
いくつか理由はありますが、一番はあなたのアイデアにほとんど価値はないからです。確かにコンセプトが非常にユニークなアイデアが生まれることはあります。(非常に可能性は低いですが)
ただ、そのアイデアをどのように提供するか、チャット・ウェブ・アプリ、どのような機能をつけるのか、いつリリースするのか、どのようにマーケティングするのかなど多くの要素があります。
こうしたことからアイデアに価値はないとしきりに言われます。
つまり、あなたのアイデアが盗む価値がある可能性は非常に低いので、その盗む価値すらないアイデアにあなたの貴重な人生の時間を使い過ぎないように、アドバイスをガンガン受けた方がいいです。
アイデアを実現したいが、エンジニアがいない
これも非常によくあります。というか自分もこの状態に陥りました。
このときの選択肢は2つで、自分でやるか、やれる誰かを探すのどちらかです。
後者を考える人が多いですが、実は自分でやるのも意外と良かったりします。
非エンジニアの人が思いつくアイデアは、意外とそんなに難しくなく勉強を含めても3ヶ月~半年程度で作れたりします。
そもそも高い技術が必要なものだとすると、それはあなたに向いていないと思うので、早々にやめた方がいいです。
自分も最初は後輩や知り合いとかに手伝ってもらいましたが、結局コミットの問題もあり、自分で進めてたまにアドバイスをもらうスタイルに変えました。
信頼できる人がすでにいる場合には、その人とチームを組んだ方がいいですし、そうでない場合には、自分で勉強するのもありです。
最近はプログラミング学習のサービスもたくさんあるので、初心者はこうしたものを利用した方が上達が早くなります。
人生を変える1ヶ月【TECH::CAMP(エンジニアスクール)】
会社はいつ作った方がいいのか?
必要になるタイミングならいつでもいいです。
基本的には、投資を受ける前にはあった方がいいですし、売上が立ったり、費用が大きくかかるのであればそのタイミングでいいです。
作ってテンションが上がるのであれば、すぐに設立してもいいでしょう。
読んだ方がいい本は?
起業をするとき、新しいアイデアを進めていくときに読んで非常に参考になった本をいくつか紹介します。
この本は相当有名かと思います。商品の構築、アイデアの検証、結果の計測など今では相当に一般的になった概念を説明しています。
この本も非常におすすめです。
アイデアから検証、拡大するまでのすべてのステップを網羅的に詳細に解説しています。
このシリーズが個人的に好きなこともありますが、このオライリーの出版するリーン系の書籍はいいものが多いです。
最後に:逆にやらない理由はあるのか?
最後にまとめの代わりに一言。
アイデアを思いついた人はそれをやらない理由があるのか、思いついていない人はそれを思いついていないというだけでやらないのか。
事業をはじめるコストはどんどん下がっています。
会社をやめてがっつり借金をするという方法でなくとも、副業でちょっと貯めたお金でできることもたくさんあります。
せっかくアイデアまで思いついたときにはぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。