スタートアップ、ベンチャーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ニュースを見ている人であれば、少なくともベンチャー企業という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
自分はスタートアップ・ベンチャー企業・大企業でそれぞれ働いたことがありますが、それぞれ大きな違いがあります。
ここでは、スタートアップという言葉の意味から興味を持った人向けに、どんな人に向いている組織なのかまでをご説明します。
目次
スタートアップとは?意味と定義
Startupという単語自体は、「開始」や「始める」といった内容を指します。
もともとシリコンバレーから生まれた言葉で、いろいろな考え方がありますが、ポイントは急成長することです。
定義はさまざまありますが、急成長することに加えて、以下のような要素がセットで説明されることが多いです。
- 再現可能
- スケーラブル
- イノベーティブ
- 社会問題を解決する
- 一時的
それぞれ簡単に補足します。
再現可能
再現可能とは、簡単にいうと何回もできるかということです。
たとえば、すごく美味しいソースが奇跡的に作れたものの、二度と作れないという場合には再現可能性はありません。
このような奇跡に頼るビジネスはスタートアップとしては、まずいわけです。(ソースだけに)
スケーラブル
スケーラブルとは、拡大可能という意味です。
たとえば、業務効率化の非常によくできたシステムがあるとして、毎月1社にしか提供できないという場合には、スケーラブルではありません。
WindowsやOfficeなどのソフトウェアの場合には、一度作ってしまえば、いくらでも複製できるので、スケーラブルなわけです。
イノベーティブ
ビジネスが革新的ということです。これはあまり問題になることはありません。
革新的ではないのに、スケーラブルで再現可能であれば、既存企業がやっているはずなので、新しいビジネスはだいたいイノベーティブです。
たとえば、コーラとまったく同じようなコーラを作って、コーラよりも1円安く売り始めたら、あまり革新的とはいえないですね。
社会問題を解決する
オレオレ詐欺は急速に広まりました。あれは急成長をしましたし、組織的にも行われましたが、スタートアップではないはずです。
社会問題を解決するのではなく、社会問題を作り出してしまっていますので。
一時的
スタートアップは一時的なものだとよく説明されます。
確かに、今年で7年目のスタートアップというのはまだわかりますが、12年目のスタートアップと聞くと非常に違和感があります。
仮に急成長が続いても、ずっとスタートアップと呼ばれ続けるわけではなさそうです。
スタートアップ企業とベンチャー企業の違い
本来的な違いはあるのかもしれませんが、実態としてはほとんど同じ意味で使われています。
なんとなくスタートアップの方がイケていて、ベンチャーの方が若干古い言い回しのイメージです。ジーパンというかデニムというかの違いで使っているのではないでしょうか。
使い分けている人の場合には、ベンチャーの方がより広く、新しく起業した会社(新興企業)全般に対して使い、スタートアップはその中でもとくに急成長を目指して、投資も受けながら積極的に拡大する会社に使う印象があります。
ほかにも中小企業、独立なども近い言葉としてありますが、だいたいこのような分類で理解しておくといいでしょう。
- 創業して数年の会社:ベンチャー
- 創業して数年の急成長している、急成長を目指す会社:スタートアップ(単にベンチャーと呼ばれることも多い)
- フリーランス、コンサルティングなどで創業:独立
- 数年を過ぎても大きくない会社:中小企業
ベンチャーだと思っている人に中小企業と言ったり、スタートアップだと思っている人にベンチャーと言ったりすると、不快に思われる可能性があるので注意しましょう。
スタートアップの特徴は?
スタートアップでも会社の規模によって相当違いがあります。
ここでは、一般的にスタートアップに参加する人が増えてくる10人前後から100人前後くらいまでの規模で考えます。
スタートアップの特徴は、大きくこのようなものがあります。大企業とも比較しながら簡単にそれぞれを説明します。
- 変化が大きい
- 会社による差が大きい
- 職域が広い
- 給料が低い
変化が大きい
上で見たように、スタートアップは急成長が前提です。
事業がうまくいっていたら採用を強化したり、仕組みを作ったり、よりそのスピードを早めるために工夫をします。
うまくいっていなければ、なおさら新しいことを試す行動を繰り返します。
本当に初期であれば、メインの事業自体が先週と変わっているということはあります。
たとえば、大企業で1年に1回あるような異動が月に1回あったり、仮説検証も月単位ではなく、週単位・日単位で、どんどん変わっていきます。
会社による差が大きい
大企業でも会社による差はありますが、ある程度の人数をまとめるために、仕組みや制度が整備されていきます。
それは、たとえば定期的な人事評価や社内の週次、月次、年次のMTG、毎年の新卒採用、退職金などです。
スタートアップでは、これが会社によってまったく異なります。会社のカラーが色濃く出ます。
毎年、○日間連続で有給を取れるだったり、社長以外の組織の階層がほとんどなかったり、在宅勤務が可能だったりします。
同じ業界やビジネスでもまったく違うことはよくあります。
職域が広い
これは大企業出身の人はイメージしにくいかもしれませんが、同じ営業職でもこのような違いがあります。
- 大企業の場合:
- 既存顧客の営業のみ(新規顧客対応、既存顧客の定型質問対応やバックオフィス業務はすべて別部署で対応)
- ベンチャー企業の場合
- 新規顧客・既存顧客の対応
- 書類対応もすべて自分で対応(場合によってはテンプレから作ったり、導入するツールから自分で調べたり)
- 社内の売上管理表や案件管理表も自分でテンプレから作成
- メインの営業以外にも経理との連携、マーケティング、Webディレクターなど営業以外のプロジェクトも兼任
自分もそうでしたが、やっていることは理解しているんですが、ほかの人にやってもらってることってあまり意識していないものですね。
自分の業務は、こんなに多くの人のサポートで成り立っているのかということを理解します。
給料が低い
これは入れるか迷いましたが、非常に大きなミスマッチになっている要因の1つなので、あえて入れました。
大企業出身の人が、現状維持というのは論外だとしても「給料を2~3割下げて転職してもいい」と考えているとします。
これは多くのスタートアップの場合、高すぎます。
たとえば、もともとコンサルタントで1,000万円もらってるとしたら3割引きで700万円です。これはスタートアップだとすると、億単位の調達をしている会社の管理職(というか部長レベル)以上です。
自分の知っている範囲の情報でも、部下が数人いて年収400~500万円程度というくらいがスタートアップの相場観かと思います。
もともと800万円くらいもらっていた人が400~500万円程度で転職するのは割とよくあります。
スタートアップに向く人・向かない人
ここまでを踏まえて、スタートアップに向いている人を簡単に見ていきます。
- 柔軟な人
- 勉強熱心な人
- 待遇に重きを置かない人
- 強い意志がある人
柔軟な人
一言でいうと、柔軟かどうかがもっとも重要です。よくある失敗が、このようなものです。
- 専門の業務範囲以外に対応できない
- 前の会社のやりかたを引きずっている
- 周りとうまく協力できていない
- ポジションと能力が合っていない
年齢でわけるのは偏見かもしれませんが、圧倒的に年齢が高い人の方に多いです。
若い人の場合には、なんだかんだ適応しますが、年齢層が高い人の場合に結局パフォーマンスが出せずに退職ということがあります。
自分なりの成功体験に縛られたり、プライドが高かったりする人は、どれだけ経歴がよくても前職で結果を出していても厳しいです。
一方で、年齢が高い人でもいわゆる感覚が若い人は馴染んでしまい、結果も出ます。
自分が採用をするときにも年齢が高いほど、柔軟性や適応力を重点的に見ます。
勉強熱心な人
ベンチャー企業はうまくいっている限りは、次から次へと新しい挑戦をします。
外部からも採用するとしてもタイムラグがありますし、毎回スペシャリストを採用する余裕もありません。
よほど専門性が高いもの以外はだいたい中の人が対応します。もちろん、その人も詳しくないので、必死に勉強します。
業務が安定している組織であれば、自分の専門をベースに進められますが、そうでもないこともたくさんやる必要があります。
こういう新しい業務に対応するには、ひたすら学習する必要があります。
周りの人にどんどん話を聞いたり、自分から本を読んだり、セミナーに行ったり、プライベートで試したりできる人は向いています。
待遇に重きを置かない人
上で見たように、スタートアップは待遇が厳しいです。高い給料が欲しい、ポジションが欲しいという人はあまり向きません。
幹部ポジションで入社する人もいますが、そこでもらえる報酬は他の選択肢に比べても低いでしょう。
待遇を重視する人はスタートアップでは長期的に不幸になるので、他の会社に行きましょう。
強い意志がある人
スタートアップに来る人は自分なりの意志を持っている人が多いです。
上で見たように業務も大変ですし、待遇もあまりよくないです。自分なりにどうしてもやりたいことがあったり、譲れないことがある人の方が向いています。
若いうちは成長欲求に人が多く、年齢が上がるとビジョン共感や自分なりの生き方に沿ったものになる傾向の人が多いように思います。
個人的な理由がない人には向いていません。面接の時に説明するための理由ではなくて、本当に信じられるものがあることが重要です。
スタートアップに興味がある人
ここまで読んできてスタートアップに興味がある人は、ぜひスタートアップでのキャリアも考えてみてください。
スタートアップの人に話を聞く
友人、同僚、先輩、知り合いなどにスタートアップで働いている人がいたらその人に話を聞いてみましょう。
知り合いがいないという人は、スタートアップ系のイベント(ミートアップと呼ばれたり)がたくさんあるので、そうしたものに行ってみましょう。
大きめの会社であれば、採用イベントをかねていろいろとイベントを開いてみます。そういう場所に顔を出して話を聞いてみましょう。
働きたいという人への注意
実際に働きたいという人は、ミスマッチを避けるためにもいくつか注意しておいてほしいことがあります。
- 知名度が高いからといって、あなたが働くのにいい会社とは限らない
- 多額の資金調達をしているからといって、いい会社とは限らない
- 友人の会社、共同経営は相当の覚悟や仕組み(契約)がないともめがち
- 可能ならインターンや休日に手伝うなどで、自分にマッチするか小さく試しておく
- 少なくとも、従業員と話したり、フロアの雰囲気を見たりする
- 社長に何かしらの違和感を感じたら避けた方がいい
- ストックオプションをもらえるという言葉は宝くじ程度に受け止める
だいぶ書きましたが、いいスタートアップ(会社として、働く従業員として、あなたにとって)探しは難しいです。
ポイントとしてはちゃんと自分の目で確かめることです。
以前、働いていた会社でも入社希望者に1日体験入社(受け入れ側は大変ですが)の対応をしたこともあります。
採用に力を入れている会社であれば、こうした対応もしてくれるので、できる限り、業務や働く人のことを知りましょう。
求人の探し方
転職サイト
スタートアップといえば、Wantedlyが有名ですね。求人数は多いです。
デメリットとしては、勤務条件や待遇などの重要性の高い情報がわからないことです。
スタートアップに限らず見ていきたい場合には、リクナビNEXTがいいです。求人数が圧倒的で、登録して損はありません。
今の年収が600万円以上の人はビズリーチもおすすめです。レジュメを登録しておくと、スカウトが来ます。
知名度のない外資系企業の日本支社や技術系のスタートアップなど、待遇がいいものが紹介されます。
今、大企業に勤めているような人はまず登録しておきたいです。自分もずっと登録してたまにのぞいています。
転職エージェント
ある程度の規模になったり、資金調達をしたりしている会社は転職エージェントも活用しています。
自分が転職したときも自力で探したスタートアップにちょっと問題があったため、別企業に転職エージェント経由で入社しました。
メリットとしては、大手エージェントであれば、あまり変な会社は扱われないのと、ネガティブな情報もちゃんと伝えてくれることです。
エージェントも大手の場合には、無理やり転職させて評判が下がるほうがダメージが多いですし、クライアント担当と求職者担当が別れていることがほとんどのため、求職者担当は味方をしてくれます。
自分の目で確かめるのも重要ですが、(自分のように失敗しないためにも)第三者の目でチェックしてもらえるとなお安心です。
いくつか紹介しますので、何社か登録してみて気の合うエージェントを探しましょう。
さらに知っておきたいこと
他にもベンチャー企業やキャリアに関して書いています。こちらもぜひどうぞ。