ここ数年で日本でも主体的にキャリアを考えていこうという流れがだいぶ浸透しました。
「うちの会社でのキャリアパスはこのようになっています」などと聞いたことがあるかもしれません。
キャリア系の用語は似たものも曖昧なものも多いので、なかなかわかりづらい面もあります。
ここでは、キャリアパスという言葉の意味からそれを会社として、個人としてどのように活用していくかまでを見ていきます。
キャリアパスとは何か?
キャリアパスとは、Career(生涯、経歴)のPath(経路)なので、自分の人生や経歴などの道筋を指します。
会社内や特定の職種で使われることが多く、一例としてはこのようなものです。
- 弊社での営業のキャリアパスは3~4年目にリーダーとなり、6~7年目にマネージャになり…
- エンジニアのキャリアパスの一例は、エンジニア⇒エンジニアのリーダー⇒プロダクトマネージャーなどがあります
キャリアパス、キャリアデザインとの違い
キャリア〇〇という言葉はさまざまあります。とくにキャリアパスに近いものを上でまとめました。
言葉の定義自体があまり定まっていないものも
キャリアプラン(Career Plan)との違い
キャリアパスの場合には、社内、職種など限定された上で使われることが多いです。(○○株式会社のキャリアパス、営業のキャリアパスなど…)
それに対して、キャリアプランは自分の将来的な理想像と現状を結ぶあらゆるものを含みます。
また、キャリアパスは会社が用意することも多いですが、キャリアプランは転職や独立なども含むため、会社が用意することはないです。
イメージとしては、限定されたキャリアプランをキャリアパスだと考えておくといいでしょう。
実際に会話の中では、「これからのキャリアパスってどう考えてる?」というように、キャリアプランと同じような意味で使われることも多いです。
キャリアデザインとの違い
キャリアデザインは、キャリアプランを作ることなので、キャリアパスを考えることも含みます。
将来どうしようかを考えるのがキャリアデザインで、それによってできたプラン全体がキャリアプラン、社内や職種で限定されたものがキャリアパスです。
企業にとってのキャリアパス制度の注意と具体例
キャリアパスは企業の視点と個人の視点がありますが、まずは企業の視点から見ていきます。
キャリアパスを作るメリット
社員のモチベーションが上がる
自分は社内でキャリアパスを作成したことがありますが、この2点から有効でした。
- (社内での)目標が作りやすい
- フェアに評価できる
どのような管理職の人でも業務のイメージやレベルが頭の中にイメージはあります。そのイメージを見える化するだけですが、
- 自分に何が求められているのか
- どういったことができると次のレベルに上がるのか
- どれくらいの時間軸なのか
- 何が今の自分に足りていないのか
といったことがわかり、モチベーションが上がったり、評価の納得感が増したりしました。
採用にプラスに働くことがある
自分の部署の場合には、アルバイト→契約社員→社員→リーダー→マネージャー…という流れが作れました。
これは、アルバイトや契約社員にとってもプラスになり、採用のときに楽でした。
キャリアパスを作るデメリット
運用に手間がかかる
キャリアパスの運用は手間がかかります。事業部や職種など、ある程度のまとまりごとに作る必要があります。
会社全体で作るケースもありますが、コンサルティングの会社のように事業や職種がシンプルであればいいですが、事業や職種が多用な場合には、目標にも評価にも役に立ちません。
また、職種ごとの違いや転職者、昔からいる人の整合性を取るのが非常に難しいです。
昔からいるだけの役職者や、上の役職で急に入ってきた人など例外だらけで制度が機能しなくなりがちです。
キャリアパスの具体的な作成例
自分の部署で作ったときには、いわゆる受託型の組織だったので、このように作っていました。
タイトル | 契約 | 習得目安 | 業務内容 |
マネージャー | マネージャー | ? | 数名程度のチームを運営、売上管理 ・重要クライアントの担当 ・メンバーの育成、マネジメント ・プロジェクトを担当 |
リーダー | リーダー | 1年程度 | 3名程度のチームを運営、売上管理 ・重要クライアントの担当 ・メンバーの育成、マネジメント |
プロデューサー | 社員 | 6ヶ月程度 | クライアントの交渉や売上を担当する ・ディレクターのマネジメント ・アウトソース先とのトラブル対応 |
ディレクター | 契約社員 | 3ヶ月程度 | 社内の業務全体がわかる ・アウトソース先との連絡 ・クライアント側との実務的な連絡 |
アシスタント ディレクター |
アルバイト | 3ヶ月程度 | おもに社内の切り出しの業務を行う ・アウトソース先との連絡 ・クライアント側への連絡はなし |
正確なものは覚えていない部分もありますが、大きく分けると社内サイド、クライアントサイド、マネジメントという流れです。
今見ると、それぞれの習得期間が数ヶ月というのがいかにもベンチャー的ですね。
人の採用が恐ろしく大変だったので、なんとか内部で昇進させていけるような仕組みづくりを作りました。
実際、アルバイト入社からマネージャーになったのが2人、それ以外にも社員になった人も数名います。
重要なのはこれを作るだけではなく、全体に伝えたり、1on1で伝えたり、フィードバックをしたりする運用でした。
個人にとっての職種別のキャリアパス
次に個人にとってのキャリアパスを見ていきます。
職種とセットで語られることが多いので、いくつかの職種を例にとって見ていきます。
エンジニア・SEのキャリアパス
ずっとIT系の会社なので、エンジニアはたくさんいましたが、キャリアパスは本当に人それぞれです。
一般的には在籍期間や転職回数が考慮される転職においても、エンジニアの場合には技術力さえあれば、あまり気にされません。
フリーランスを挟んで、また企業で働いたり、独立したりと多様です。ここでは、いくつかのパターンとそれぞれのポイントを簡単に見ていきます。
クライアントに向き合う
SIer出身の人などに一番多いパターンかもしれません。
クライアントありきの場合には、要件定義や設計からクライアントとの交渉などを行います。いわゆる上流工程です。
コミュニケーション能力が非常に重要で、うまくクライアントのコントロールができないと事故ります。(多数、経験あり)
- ITコンサルタント
- 受託型のプロジェクトマネージャー、ディレクター
サービスを作る
Webエンジニアの場合には、自分で手を動かすだけでなく、企画をしたり、マーケティングに近いような施策をしたりするパターンも多いです。
ここは、開発経験がない人もいますが、会社によっては開発経験者を中心に企画から開発までを一気に行うケースもあります。会社によって呼び方はさまざまです。
- プロデューサー
- ディレクター
- プロジェクトマネージャー
マネジメントする
受託型と自社のプロダクトで違う部分もありますが、技術的な背景を生かして、プロジェクトやプロダクトのマネジメントに進むパターンも多いです。
プロジェクトはどちらかというと、決められたものを納期やリソースを守りながら、間違いのないように作っていくマネジメントで、プロダクトはユーザーが必要なものすべてをしていくイメージがあります。
CTOは、技術面はもちろん、いい人材を集めてきたり、カルチャーを作ったりと会社の技術的なアイコンとしても重要です。
- プロジェクトマネージャー
- プロダクトマネージャー
- CTO
スペシャリストになる
エンジニアはどんな人でも新しい技術を勉強することが多いですが、ずっと第一線でコード書いていたいような人もいます。
企業にコンサル的に関わったり、スタートアップでCTOをやったりするイメージです。プロダクト作りは何でもできるようなイメージです。
- フルスタックエンジニア
- スタートアップのCTO
自由になる
ある程度の経験を得た後に、自由に働くひともいます。フリーランスのエンジニア向けサービスも今はたくさんあります。
起業をしたり、個人事業主的に働いたりといろいろな人がいます。何年か働いてみて、会社に戻るような人も結構います。
- フリーランス
- 独立・起業
経営企画のキャリアパス
経営企画はベンチャーではあまりない役職なので、大企業で配属された人やもともとコンサルタントの人が多いです。
昔ながらの日系企業の場合には、そのまま経営層に上がっていくかもしれませんが、それ以外の人はコンサルタントなど、売りやすい経歴をつけておくとキャリア的には楽になるかと思います。
実務からは結構離れがちなので、それが嫌でもっと手触りのある仕事に転職する人もいます。自分の周りでは極端な例として営業になった人がいます。
コンサルタントのキャリアパス
コンサルティングの人は本当に多様で、自分の周りの場合には、数年してからベンチャーに行く人も多いですし、元コンサルタントの人が作った会社に入るような人もいます。
ほかにも大企業や外資系のマーケティングやファンドに移る人もいます。新卒でコンサルタントの人の場合には、実務離れしている人が多いので、早めに実務をしておくと、実世界に戻ってきやすい印象です。
さらに知っておきたいこと
ほかにもキャリアや転職について書いているので、ぜひこちらもどうぞ。知識が増えると、選択肢が広がります。